棚卸資産の評価損は法人の費用(損金)になるか?
棚卸資産の評価損は法人の費用(損金)になるか?
期末に倉庫で実地棚卸を行うと、何年も前に仕入れた商品ですでに型落ちして価値がなくなったものや、仕入時には高かったけれども現在は流行が終わって価値が大きく下がっているものなどがあるかと思います。この時、会計上では棚卸資産の帳簿上の金額を実際の棚卸資産の価値に下げるためこの差額を
棚卸資産評価損/商品
などの仕訳を行うことで商品の帳簿上の金額を実際の価値に合わせ、差額を評価損として費用とするかと思いますが、
このときこの「評価損」が法人税法上は費用(損金)として認められるかが問題となる場合があります。
これは棚卸資産の期末残高はある程度恣意的に操作することにより、事実上利益操作が可能である点、上記の「実際の価値」というものを客観的に証明することが困難である点の2つによるかと思われますが、
法人税法上では原則として、こうした評価損は費用(損金)としては認められず、政令等に規定された「評価損を計上することができる対象資産」「計上が認められる事由」に該当するもののみ認められております。この概要を記載しますと以下のようになります。
(対象資産)
A,棚卸資産
B,有価証券
C,固定資産
D,繰延資産のうち一定のもの
(計上が認められる事由 ※対象資産により変わります)
- 災害による著しい損傷
- 著しい陳腐化、価値の低下(おおむね50%程度の低下)
- 会社更生法等、民事再生法等の場合
上記の「計上が認められる事由」は対象資産によって変わり、例えば棚卸資産については①と③しか認められておらず、有価証券では②と③しか認められておりません。
また、対象資産には金銭債権はないため、回収が見込めない売掛金や手形について評価損を計上することは認められない点にも注意が必要です。
このように会計上では帳簿上で金額が実際よりも高すぎる棚卸資産については評価損を計上することで、帳簿上の金額を実際の価値に合わせ、差額を当期の費用とする処理が考えられますが、
法人税法上では上記の対象資産・経常事由に該当しない場合はその評価損が法人の費用(損金)として認められない可能性がある点にご注意ください。
なお、評価益についても条文は異なりますが同様に規定されております。
参考:法人税法25条、33条、66条、法人税法施行令68条
国税庁HP 第2款 棚卸資産の評価損|国税庁 (nta.go.jp)
大阪の税理士 杉本会計事務所
大阪市東住吉区杭全3-4-4
業務部法人第二課 監査担当 泉徹弥