法人税の申告書のしくみ ①
一般的な株式会社であれば、原則として期末から2か月以内に税務署に法人税や消費税の確定申告をして納税を行います。
このときは確定申告書とともに決算書、いわゆる貸借対照表や損益計算書も添付するのですが、今回はこの損益計算書の最終値である「税引後当期純利益」からどのように法人税の税額が計算されるのかをざっくりと説明したいと思います。
なおこの説明は複数回に分けて行う予定で、今回の①では法人税の申告書の別表についての簡単な説明と、ざっくりとした税額計算方法についてご説明いたします。
なお説明の中に「中小法人等」が出てきますが、こちらは法人税法上の専門用語となっており、ざっくり説明しますと
「普通法人のうち期末の資本金が1億円以下のもの等(期末に資本金5億円以上の大法人による100%支配を受けている法人等を除く)」をいいます。
- 法人税の申告書の概要
法人税の申告書は、大きく分けて4つの部分に分かれます。
- 別表4:損益計算書の「税引後当期純利益」から、法人税が 課税される「所得金額」を計算する別表
- 別表1:別表4で計算した「所得金額」から、確定申告で納付すべき「差引確定法人税額」を計算する別表
- 別表5:法人税法上の資本金等(会計上の資本金と資本準備金の合計とほぼ一致)と利益積立金(会計上の利益準備金と繰越損益金剰余金とほぼ一致)を管理する別表
- その他の別表:別表1、4、5の処理の根拠となる別表
法人税の申告書は上記の通り、まず別表4で損益計算書の「税引後当期純利益」を法人税が課される「所得金額」に変換し、
次に別表1でこの所得金額(千円未満切捨)に×23.2%をして百円未満を切捨てて税額(これが1年間に納付すべき法人税額です)を計算し、
事前に中間納付した法人税額があれば、それを除いた金額が「差引確定法人税額」になります。
ただし、法人税率は一般的な株式会社では23.2%ですが、中小法人等では所得金額800万円までは税率は15%で計算し、800万円を超えた部分が23.2%の税率となります。
例えば所得金額が1,000万円の場合は、800万円までは15%、これを超えた200万円部分が23.2%のため、
税額は800万円×15%+200万円×23.2%=166.4万円になります。
別表4で行う「税引後当期純利益」を「所得金額」に変換する処理は詳しくは次回に説明する予定ですが、
ざっくり説明すると損益計算書の「税引後当期純利益」にそのまま法人税率をかけて計算せず、いったん別表4で利益を加減算する処理があります。
たとえば1,000の備品を5年の定額法(償却率0.2)で減価償却する場合において、毎期の減価償却費は1,000×0.2=200となりますが
これを会計上で誤って300減価償却したとします。この場合
会計上では 減価償却費300/備品300 の仕訳をしますが
法人税法では 減価償却費200/備品200 の仕訳をしたと考えます。
この時、会計上の方が費用が100多いため、会計上の利益が税務上の利益に比べて100少なくなり、その分税額が過少になってしまいます。
そこでこの場合は別表4で会計上の利益に100プラスすることで、会計上の利益を税務上の利益に合わせます。
この「別表4で会計上の利益に100プラスする」作業が変換処理となります。
- ざっくりした法人税等の税額計算
法人税額の計算は、「その法人が中小法人等か」「欠損金はあるか」「税額控除等があるか」などによって変わるため、一概に説明するのは難しいですが、
当期の利益以上に欠損金(法人税の別表7に記載されている、過去10年分の赤字の累積)がある場合は、納付する税額は道府県民税・市民税の均等割だけの可能性が高いです。
これら均等割については所得が赤字であっても支払わなければならない税金となっております。
また消費税については利益が出たかどうかにかかわらず
「売上に係る消費税」-「仕入・費用に係る消費税」-「中間納税額」
を納税するため、こちらも赤字であっても納付する可能性が高いことにご注意ください。
なお法人税だけ考える場合でしたら、先ほど述べた通り税率は23.2%ですが、確定申告において他に納税する可能性のある税金としましては地方法人税や法人府民税・市民税・事業税等・事業所税などがあります。
そこでざっくりとした消費税以外の納税額としては、税引後当期純利益に ×30~40%した金額以下を目安に考えると良いかと思っております。
大阪の税理士 杉本会計事務所
大阪市東住吉区杭全3-4-4
業務部法人第二課 監査担当 泉徹弥