赤字でも繰り越せます!中小企業向け賃上げ促進税制
賃上げ促進税制という法人税(個人事業主は所得税)の優遇措置をご存じでしょうか。
①全企業向け、②中堅企業向け、③中小企業(個人事業主)向けで少しずつ要件が異なりますが、大まかに申し上げますと、前年度より給与・賞与の支払いが一定の要件を満たして増加した場合に税額控除を受けることができるというものです。
中小企業は①全企業向け、②中堅企業向けの要件の適用も可能ですが、このコラムでは、
③中小企業向けの制度についてご説明します。
(全企業向け、中堅企業向けの制度の詳しい説明については、経済産業省HPをご参照ください。 https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html )
【対象となる事業者】
・青色申告書を作成している
・資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(※)、協同組合等
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
※同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人・2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人は除きます。
・R6.4.1~R9.3.31までの間に開始する事業年度(個人事業主はR7年~R9年)
【適用要件】
(雇用保険の一般被保険者に限られない)全雇用者の給与・賞与等が前年度と比べて1.5%以上増加していること。
役員と役員(個人事業主)の親族等特殊関係者への支給金額は除きます。
雇用者給与等支給額(適用年度の支払額)-比較雇用者給与等支給額(前事業年度の支払額)
/比較雇用者給与等支給額(前事業年度の支払額)≧1.5%
例)当期の給与支払額800万円、前期の給与支払額750万円
(800-750)/750=0.06666… 6.6%の増加のため適用可能です。
【「補填額」の確認】
前述の「雇用者給与等支給額」「比較雇用者給与等支給額」つまり給与の支払額から、「給与等に充てるため他のものから支払いを受ける金額」は除く必要があります。
(給与等に含めることができないものの例)
・労働移動支援助成金、特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、地域雇用開発助成金、人材確保等支援助成金、通年雇用助成金、キャリアアップ助成金、両立支援等助成金、人材開発支援助成金等
(給与等に含めることができるものの例)
「雇用安定助成金額」及び「役務の提供の対価として支払を受ける金額」は、「補塡
額」には含まれておらず、(比較)雇用者給与等支給額に含めることができます。
・雇用安定助成金(雇用調整助成金、産業雇用安定助成金、緊急雇用安定助成金等)
・役務の提供の対価として支払いを受ける金額(看護職員処遇改善評価料、介護職員処遇改善加算等)
・キャリアアップ助成金のうち「社会保険適用時処遇改善コース」
例1)当期の給与支払額800万円(うち労働移動支援助成金100万円)、前期の給与支払額700万円
(当期800-100)-700=0…増加額が0→税額控除適用不可
例2)当期給与支払額800万円(うち雇用安定助成金100万円)、前期の給与支払額750万円
(800-750)/750=0.06666… 6.6%の増加のため適用可能
※雇用安定助成金は給与等に含めることができます。
【控除される税額】
給与の増加額の15%を法人税額から控除
(雇用者給与等支給額の増加が2.5%以上の場合は30%)
例)当期の給与支払額800万円、前期の給与支払額750万円
(800-750)/750=0.06666… 6.6%の増加のため適用可能
増加額50万円の30%→15万円まで税額控除可能(税額控除限度額)
【上乗せ措置】
①教育訓練費が前年比プラス5%以上増加かつ給与支給額の0.05%以上である場合…税額控除率を10%上乗せ
②適用事業年度中にくるみん認定等を取得…税額控除率を5%上乗せ
(②は子育て・女性活躍支援として令和6年度改正として新設。適用事業年度中に取得しないと適用できないことにご注意ください。)
※プラチナくるみん認定・プラチナえるぼし認定は過去に取得していても適用年度終了時に認定を保持していれば可能。
【繰越し】
賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額について、5年間の繰り越しが可能です。
税額控除は法人税額または所得税額の20%が上限です。
決算が赤字で税額がなかったり、税額の20%上限まで控除しても控除限度額まで引ききれなかったような場合に、翌事業年度以降に繰り越して税額控除を受けられます。
控除を受けるには、
・繰越税額控除限度額の明細書(申告書の帳票)を提出していること。
・繰越控除を受けようとする事業年度において雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額(前年の支給額)より増加していること。
・繰越控除を受けようとする事業年度が青色申告であること。
を満たす必要があります。
【まとめ】
青色申告を行う中小企業および個人事業主で、前年度よりも給与の支払い額が増加している場合、法人税または所得税の税額を控除する優遇措置が受けられる可能性があります。
当期の決算が赤字だったり、控除が限度額まで引ききれなかった場合でも、一定の要件を満たせば5年間繰り越して控除が受けられます。
給与や賞与の支給額の決定のご参考にされてはいかがでしょうか。
参考:中小企業庁 中小企業向け「賃上げ促進税制」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html
大阪の税理士 杉本会計事務所
大阪市東住吉区杭全3-4-4
企業第五課 監査担当 北内 えりな