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2025.04.07

給与を電子マネーで支払う/受け取るには

2024115日現在、指定資金移動業者であるPayPay株式会社が「PayPay給与受取」サービスを開始したことにより給与の受取に際して「デジタル払い」が選択できるようになりました。
給与のデジタル払いを実施するためには厚生労働省大臣に指定された「指定資金移動業者」を介する必要があります。
現在この指定を受けているのがPayPay株式会社のみで、ソフトバンクグループ10社のみで運用していたのを、この度「PayPay給与受取」サービスを開始したことにより、他の一般の給与でも利用できるようになりました。

本コラムでは給与のデジタル払いと導入に必要な手続きについて確認したいと思います。

【実は20234月から解禁されていた】

給与の支払いについては、労働基準法24条で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定められていて、この例外措置として給与のデジタル払いについての法整備が進められてきました。

20221128公布「労働基準法施行規則の一部を改正する省令」によって202341日から給与をデジタル払いすることが可能となりました。

【給与のデジタル払いとは】

「○○Pay」などのスマートフォン決済アプリを手掛ける業者(指定資金移動業者)の口座へ賃金支払いすることです。
ただし、実際に実施するためには、利用する指定資金移動業者が厚生労働省の審査を受け、厚生労働大臣に指定資金移動業者に指定されている必要があります。
2024
89日現在、厚生労働大臣の指定を受けた指定資金移動業者はPayPay株式会社1社で、指定申請数が4社、審査中が3社とされています。
(厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html

 

なお、指定資金移動業者は次の要件を満たす必要があります。

①口座の上限額は100万円以下
②口座残高の現金化が可能

③口座残高の払い戻し期限は少なくとも10年間

④不正取引発生の損失額補償

⑤指定資金移動業者破綻時の弁済

唯一指定を受けているPayPay株式会社がソフトバンクグループ各社向けに運用していたのを、2024115日より一般向けサービスとして運用開始したことにより、今後利用の広がりが予想されるということになります。

【給与の支払・受取にデジタル払いを導入するには】

給与の支払いでデジタル払いを選択できるようにするには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

1)労使協定の締結
事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、ない場合は労働者の過半数を代表する者と、賃金のデジタル払いの対象となる労働者の範囲や取扱指定資金移動業者の範囲等を記載した労使協定を締結する必要があります。

2)従業員への説明と同意

賃金のデジタル払いを希望する個々の労働者は、留意事項等の説明を受け、制度を理解した上で、同意書に賃金のデジタル払いで受け取る賃金額や、資金移動業者口座番号、代替口座情報等を記載して、使用者に提出することが必要になります。

 

これらの手続の上、希望者は「一部をデジタル払い、残りを銀行振り込みにする」というような選択が可能になります。
また、労使協定に合わせて就業規則(給与規定)についても改定が必要なことにも注意が必要です。

【まとめ】

・給与はデジタル払い(電子マネー)で支給することが可能
・デジタル払いは厚生労働大臣が指定した「指定資金移動業者」を通じてのみ可能

・デジタル払いを実施するには、労使協定の締結と、従業員への説明・同意が必要

・デジタル払いは給与の支払・受取の選択肢のひとつであり、希望者のみ適用される

キャッシュレス決済の普及に伴い、給与の受取方法の選択肢が増えると、従業員側では利便性の向上が期待でき、企業側では多様な人材の採用・確保が期待できます。
反面、労働協定の締結・就業規則の改定や導入運用コストがかかることや、現段階では金額の上限や選択できる指定資金移動者が限定されていることなどを踏まえ、ご検討の一助になれば幸いです。

 

 

大阪の税理士 杉本会計事務所
大阪市東住吉区杭全3-4-4

企業第五課 監査担当 北内 えりな

 

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